第16話(2) 公爵からの条件

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「え…お兄様?」  追いかけてきたルーカス様と一緒にお父様の執務室の前に到着すると、扉の前で中には入らずに立っているお兄様の姿があった。 「シャロン? 今、謹慎中のはずだろう?」  私の姿を認めたお兄様は少し驚いたように私を見る。 「…レオンが、お父様に怒られていると思って…」  思わず飛び出してきたのだと説明すると、お兄様は可笑しそうにクスクスと笑った。 「いい子のシャロンが、こんなに悪い子になってしまうなんてね」 「お兄様、揶揄わないで。レオンは大丈夫なの?」  私はすぐに室内へ入ろうと扉のドアノブを掴むと、お兄様がそっと私の手を止めた。 「…入ってはダメだよ」 「なぜっ…」 「シャロン。君がそんなんじゃ、レオンが報われないな」  普段優しいお兄様の目つきが鋭くなる。初めて見たお兄様の一面に私はビクリと肩をあげて怯えた。 「落ち着きなさい。父上とレオンが今何の話をしているのかよく聞いてごらん。それから、シャロンの行動を決めるといい」  お兄様に言われて納得は出来なかったが、仕方なく私はドアノブから手を離した。「いい子だね」とお兄様はニコリと笑うが私は顰めた表情でお兄様を見上げる。  言われた通りに、室内にいるお父様とレオンの声に集中してみた。 『………だ』  あ、お父様の声…。集中すると、二人の会話が聞こえてきた。
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