傷心お嬢様の恋活奮闘記 〜お嬢様、何もせずにイケメンが降って湧いてくるのは物語の中だけなのです〜

第１話 メイドの告白と教え

　
『てんせいしゃ』？

　メイドの話によれば、彼女には前世の記憶があるらしい。
　前世では『にほん』と言う国で不自由なく暮らし、メイドではなく『おーえる』と言う仕事をしていたと言う。

「当時の私は仕事帰りに交通事故に遭い、死を迎えた筈でした…」

　更に彼女の話はこちらが止める隙も与えずに続く。自身の死を理解し、次に目を開くとこの世界にいたのだとか。初めて見る国、文字、文化、そして魔法。彼女の前世の世界には魔法は無かったのだと教えられ、人々はどうやって生活していたのかと驚いた。何やら魔法の代わりに『かがく』が進んでいたのだとか…よく分からないけれど。

「とにかく、私はこの世界に生まれたことを神に感謝致しました！　異世界！　剣と魔法！　ファンタジー！　やっほう！」

「お、落ち着いて…」

　メイドの勢いに圧倒される私を見て、彼女は少し頬を赤らめしおらしくなる。「…と、まあこのような経緯で前世を思い出した訳ですが…」と、次に前世の世界の話も聞かせてくれた。