第16.5話(1) 葡萄酒の盃

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「リチャードとソフィがこの屋敷に来て、何年になった?」 「そうですね、ソフィとは同じ時期に来ましたから…13年になりますね」 「そうか、13年…私は13年かかってもまだまだ遠回りの途中だというのに、レオンはたった数ヶ月で自らの道を切り拓いたんだね」  今朝、シャロンとレオンが堂々と手を繋ぎナイトベル公爵邸から収穫祭へと外出する様子を思い出しながらなんとなく呟いた言葉であったが、リチャードは少し寂しそうな表情をした。  私もすぐに言わなければ良かったと後悔する。これでは隙を見せてしまっているではないか。 「13年…長いようでまだまだ短いですよ。僕たちがあと何十年生きていくと思っているのですか?」  リチャードなりの励ましだとすぐに分かった。私はリチャードに目を向けて「確かにそうだ」と笑って答える。  レオンにはレオンの物語があり、私には私の物語があるものな。何を感傷的になっていたんだか。
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