第16.5話(1) 葡萄酒の盃

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 レオンは真っ直ぐな性格の彼らしい手法で父上に挑み、そしてチャンスを掴み取った。私には真似の出来ないことだったからか、とても羨ましく思った。  けど、焦らなくていい。今はまだ足場を固めていく段階。私の進む道なりはこのままでいい筈だ。 「しかし、13年…懐かしいですね…シモン様、覚えていますか? まだ僕とソフィがこの屋敷に来たばかりの頃、シモン様と二人でソフィを虐めようと何度も画策して、その度に返り討ちにあったこと」 「…あれはリチャード一人がやったことだ。私は巻き込まれただけだよ?」 「いえいえ! シモン様も嬉々としてどうソフィを驚かすのかと案を出されていました!」 「……私は純粋に、ソフィと仲良くなろうとして…」 「平民と共に働きたくないと言う僕に同意してくれたではありませんか」  リチャードの言葉を聞いて、ムスッとした顔の幼いリチャードを思い出す。 「…そういえば、昔リチャードはそんな事を言ってソフィを認めたがらなかったね」 「…本人には絶対に言いませんけど、今では誰よりもあのメイドを認めています」  リチャードは少し照れ臭そうに「内緒ですよ」と人差し指を口元に添えた。
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