第16.5話(1) 葡萄酒の盃

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「シャロンたちと一緒に祭りに向かっていなかったかい?」 「まあ、そうですけど…昼間ならいざ知らず、夜はほら…恋人の邪魔をするなんて野暮かなぁ、と思いまして」  照れるようなソフィの表情に、私は納得した。ふと、ソフィの手にとある葡萄酒の瓶が握られていることに気付いた私はじっとそれを見つめた。ソフィは私の視線を感じたようで、その酒瓶をよく見えるように小さく掲げてみせた。 「久しぶりに3人でやりませんか? アレ」 「お! アレか、いいね」 「…まったく、私はまだ仕事中なんだけどな」  ソフィの提案に乗り気なリチャードと、呆れながらもそそくさと席を立ち二人の元へ向かう私。  ソフィは酒瓶と一緒に平たい小さな器も三つ持ってきていたのでそこに葡萄酒を並々と注ぐ。  ワインが注がれた器をそれぞれ手に持ち、お互いに向かいあって掲げあった。 「シャロンお嬢様とレオン様の恋に乾杯」 「シモン様の長年の努力に乾杯」 「…ナイトベル公爵家の栄光に乾杯」  それぞれが好きに乾杯の音頭をとり、そして同時にワインを飲み干す。  昔ソフィが教えてくれたが『盃を交わす』と言うらしい。友誼の証として共に酒を飲み交わすのだとか。初めて聞いた文化だが、中々に面白いと思う。
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