第16.5話(2) デザイナー達の試練

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 そう、ひと月後にあるセドリック王子の王太子授与式と言えば、国中の全ての貴族が集まる式典だ。そこにシャロンはパートナーを私ではなくレオンがいいのだと父上にねだった。  まあ、ナイトベル公爵家としても推薦者であり且つレオンは公爵の庇護下にあるのだと知らしめさせられる為、パートナーとして参加させることは別にいいのだ。  問題は、レオンが平民故に式典に参列できる正装を持っていないことである。本来なら、このような式典に参列するため2、3ヶ月かけて準備をするもの。きっとシャロンはこの問題に気付いていない。  国中の貴族が集まる中、ナイトベル公爵家がひとつでも笑われることなどあってはならない。  まさか、レオンがこのままでは笑われてしまうかもしれないなどと微塵にも思っていないシャロンはなんとも暢気な様子である。 「衣装部屋を開けておけ! デザイナーが来たら私も向かう!」  父上はそう言って自身の執務室へと向かったようだ。  未だ自分の身に降り掛かろうとしていることを認識出来ていないのかポカンとした表情のレオンの肩を叩いて「ここからが本番だ、頑張ろうね」と私は優しく声をかけた。その隣では、可哀想な者を見つめるような表情で、ルーカスも強く頷いていた。
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