第2話(3) 裏切りと亀裂

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第2話(3) 裏切りと亀裂

 時は少し経ち夕刻前。俺たちは今、学園内にある生徒会室の前にいる。それも気付かれないように、息を潜めて、こっそりとやってきた。  俺とハリスは籠いっぱいに入った花吹雪を、ラザークはクラッカーを手に持たされて。隣のシャロン嬢とシモン先輩は、それはもう大きなお祝いケーキを2人がかりで持ち運んでいる。専属メイドは、記念撮影係として魔法具であるカメラを持っていた。  …まさか、このような事になるとは。  リリスの事を相談されると思っていた俺たちは、完全に肩透かしを食らった。  婚約して6年目記念日? なんだその花畑思考。  氷で出来た美しい人形のように冷たい人だと噂のシャロン嬢から、こんなハッピーな相談を持ち込まれるとは…。  噂といえば…シャロン嬢がリリスに嫌がらせをしているというアレ。こんなお可愛らしいことを一生懸命に考えるシャロン嬢がそんな事をするだろうか? やはり、噂は所詮、噂…か?  チラリとシャロン嬢の表情を伺えば、緊張したようにそわそわしている。  シャロン嬢って、イーサンの事大好きだったんだな。  …リリスとイーサンの事を考えると、めちゃくちゃ可哀想じゃないか、シャロン嬢…。  俺、次からはもう少しシャロン嬢の事を考えてやれとイーサンに提言するようにしよう。今までのことに対してせめてもの罪滅ぼしとして、秘密のサプライズで驚かしてお祝いしたいと言うなんとも可愛いお願いにも最後まで付き合うぞ!  ハリスとラザークも、シャロン嬢が気の毒だと思っているのか文句ひとつ言わずに協力しているしな。
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