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第17話(1) 壊れた歯車
ここはとても煌びやかな世界だ。僕が以前いた世界とはまるで違う。…ううん、これからは僕の世界。
優雅で、甘美で、そして卑劣な、腐り切った悪の巣窟。
「お初にお目にかかります。セドリック王太子殿下」
僕の王太子授与式も終わり、王宮では舞踏会が盛大に行われた。もう何十人目になるのか分からない貴族たちの挨拶を笑顔で受け取り続け、そろそろ表情筋も限界な気がする。
挨拶は四大公爵達の挨拶から始まり、順に侯爵、伯爵…と位が高い者から低い者へと順に行う習わしだ。
ここぞとばかりに自身の娘を連れて挨拶する貴族もいた。もう一度会いたかった令嬢は来てくれなかったのに…どうでもいいと内心息を吐きながらも笑顔で対応する。
僕は所謂、首振り人形だ。言われた通りに笑って頷いていればいい。
今まで忘れ去られていて王宮の片隅にいた僕に一体何ができるというの? 今、笑顔で挨拶する目の前のこの貴族もそう思っているはずだ。
僕を目敏く見つけ、この世界に引っ張り出した父上の横顔を見つめ僕は思う。
いつか、この国を…。
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