83人が本棚に入れています
本棚に追加
貴族たちは僕の存在に驚きを隠せないようだった。存在は知っていたけれど、初めて僕の姿を見た者は口々にこう言っている。『母君譲りのあの髪色…滅びたペネシャ王国を思い出す』とね。
戦争に負けたペネシャ王国の姫だった母上が最後の望みをかけて頼ったのがこの国だったと聞いた。
父上は母上を受け入れ王妃として婚姻するも、長年の間子は出来ず…側妃として四大公爵一柱、クラウディア公爵令嬢を迎え入れてすぐにイーサンお兄様がお生まれになった。
敗戦国の姫君から、役立たずの王妃になった母上は当時、どんな気持ちだったのだろう?
側妃様は母上の事が気に入らないらしく、強く当たられていたとも聞いた。後ろ盾のない母上は耐えるしかなく、そんな中でも遂に僕を産んでくれた。
元々虚弱だった母上は僕を生んだことにより身体が障って寝たきりとなった。僕はそんな母上の側にずっといた。本当は知っていたんだ。母上は、王宮がこわくて逃げているのだと…。
そんな母上は僕に優しく言う。『セドリック、貴方の役に立ってあげられなくてごめんなさい』。僕が『母上が笑ってくれていれば何も要らないよ』と答えれば、母上はとても悲しそうに笑うんだ。
最初のコメントを投稿しよう!