第17話(2) 月光の影にひそむもの

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第17話(2) 月光の影にひそむもの

 人気の無かったテラスにもダンスで踊り疲れた様子の男女がチラホラとやって来出したので、僕は人目を避けるように、薄暗い会場ホールの裏側にまわった。 「セドリック王子は…」 「まだ幼いセドリック王子に王太子が務まるのか…」 「セドリック王子はあの王妃の息子だから…」 「イーサン殿下と比べるとセドリック王子は…」 「後ろ盾の無いセドリック王子が、貴族派の傀儡に…」  こういった噂話は表よりも裏の方がよく耳に入るもの。どこへ行っても、セドリック、セドリック、セドリック。  みんな、誰も僕なんかに期待しちゃいない。僕だって応えるつもりもない。けれど、貴族派、ね……。 「本日のシャロン様のパートナーをご覧になりました?」  思案していたところで、僕ではない別の噂話が耳に飛び込んできた。  僕はその噂の人物に関心もあり、噂話をはじめる数人の令嬢たちから少し離れたところでカーテンの陰に隠れて耳を澄ませた。
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