第17話(2) 月光の影にひそむもの

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「シモン様、今日もとてもお素敵で…あんな殿方にリードして貰えるなんて、シャロン様が本当に羨ましい!」  と、耳に飛び込んできたのはかなりどうでもいい内容だった。僕ははぁ、とため息をついてその場から立ち去ろうとする。 「それについては同意しますけれど、シモン様でなくもう一人のパートナーについてですのよ!」 「あ、あの平民の!」  平民……さっき、噴水でシャロン嬢と一緒にいた、あの男…。思わず足を止める。 「なんでも、ナイトベル公爵閣下が推薦者として、聖騎士玉団の入隊候補試験を受けるのだとか…」 「まぁ! あの?」 「ええ…もしあの平民が『聖騎士』の称号を賜れば、推薦者であるナイトベル公爵は更に強固な権力を得ることになりますわね」 「でも、平民に受かるかしら? あの試験は優秀な者の中から選ばれた一握りの者ですら狭き門だと聞いています」 「貴女、知りませんの? あのレオンという平民は、剣技大会であのエリック様を押さえ優勝を勝ち取った強者ですのよ」 「まあ! エデルナンド侯爵の!?」 「さらに、シャロン様の恋人なのだとか…」  え…、と驚きのあまり思わず小さな呟きをこぼしてしまった。僕は慌てて両手で口を抑え令嬢たちを伺うが、僕に気付いている者はいなかったので安心した。
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