第17話(2) 月光の影にひそむもの

4/5
前へ
/320ページ
次へ
 公爵令嬢と平民が? そんなまさか。さらに今の話を聞く限り、ナイトベル公爵も公認している…?  何故か分からないけれど、心臓がドクドクと暴れて痛いくらい。僕は訳がわからずに、服に皺が出来るくらいギュッと胸を抑えた。  ひたすら歩いていると、賑やかな会場ホールからはずいぶんと離れたところまで来てしまった。  光が灯されていない廊下で、光源は空に浮かぶ大きな月だけ。僕はその月を見上げていると、ひどく自分が偽物のような気分になって不安感を抱いてしまう。 「…気分が優れないのですか?」  立ち止まり、胸を抑えて蹲っていると、この暗闇に似つかわしくない鈴の音のような女性の声がした。  僕は驚いてその声がした方に目を向けると、廊下の奥で…ちょうど、月光が当たらない影の中に身を隠す何者かの姿を見つけた。 「…誰です?」 「ふふ、私が誰だか知りたいですか?」  鈴を転がすように楽しそうに笑う女。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加