第18話(1) ヒロインの初撃

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「と、とにかく寒いわ…リリス嬢、池から上がりませんか?」 「まあ、私のこの哀れな姿を見ても何も思わないのね…少しでも心を痛めてくれる人だったなら…イーサンくんもシャロン様を愛していたはずだわ…」  このリリス嬢の発言に周りの生徒たちが騒ついた。とくに女子生徒の目つきが鋭くなった気がする。哀れな姿は私も一緒なのだが…。 「あの…私、貴女を突き飛ばしてなんて、くしゅっ、何か行き違いが、くしゅんっ、あるように思うわ…」  もうすぐ冬を迎えるという秋の季節は肌寒い。そんな中に、冷たい池で遊泳したい者などいないだろう。私は奥歯をガタガタさせながら両腕で自身の体を抱き締めていた。 「確かに貴女とぶつかってしまったけれど、くしゅんっ、決してワザとぶつかったわけでは…んくしゅっ」 「自分の悪事を認めないと言うの?」  あ、悪事って…。確かに私たちは池の側でぶつかりました。それも、リリス嬢が後ろから私に突進してきたようにも思えるけれど…それはまあ、とりあえず置いておきましょう。池に落ちそうなリリス嬢に気付き私は咄嗟にリリス嬢を助けようと腕を掴んだのだ。結果はご覧の通りだけれど。
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