第18話(1) ヒロインの初撃

3/6
前へ
/320ページ
次へ
「お嬢様! 大丈夫ですか!?」  生徒の壁を掻き分けて、私の専属メイドが悲痛の叫びをあげている。 「あ、良かったソフィ…寒くて、くしゅっ…リリス嬢と私を池から助けてちょうだい」 「はい! すぐにでも!」  ソフィが私に手を伸ばしてきたのと同時に、ソフィよりも太い腕がさらに伸びてきた。 「シェリー! 一体何があったんだ?」  レオンだった。レオンの逞しい腕が私を捕まえて、池の水を吸った制服が重い筈なのに軽々と私の体を引き上げる。 「二人とも…あり、がとう、くしゅんっ」  今日のレオンもなんて素敵なの…。震える体を抑えながら私はレオンに微笑んだ。ソフィがすぐに私の制服の水を絞り、レオンは騎士学部生徒が羽織っているジャケットを私の肩にかけてくれた。 「なんで池なんかに…」  戸惑った表情でつぶやくレオンに、リリス嬢が声高らかにして言う。 「シャロン様が私を恨み池に突き飛ばしたのです!」 「……はあ?」  レオンの黄金の眼光が鋭くなる。ビクリと少し怯えた様子のリリス嬢だったが、何故か勝ち誇ったような顔でこちらを見ていた。…彼女、寒くないのかしら。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加