第18話(1) ヒロインの初撃

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 新学期を明けると、私とレオンの関係は公認になっていた。…まあ、セドリック王太子殿下の祝賀パーティであれだけレオンを連れ回せば、そうなるわよね。 「皆さま、お騒がせいたしました」  ソフィを伴いこの場を去ろうとするレオンの肩越しに、いまだ私たちを見つめたまま固まる生徒たちに声をかけた。するとレオンは立ち止まり、私が皆さんのことを無理なく見れるように少し体を動かし振り返ってくれた。 「それでは、ご機嫌よう!」  私は幸せのあまり心からの笑顔を浮かべた。  皆、ハッとした顔をする。意外そうに私を見つめるいくつもの視線に気付くことなく、私はもうレオンだけを…私だけの騎士を見つめていた。 「レオン、ソフィ。助けてくれて、ありが…くしゅんっ」 「どういたしまして。早く部屋に向かったほうがいいな」 「お嬢様、体が温まる美味しいスープを作って差し上げますからね…!」  私は今幸せだ。私の好きな人たちが、こんなにも私を気遣って大切にしてくれている。  だからリリス嬢の「本当に誰? あんな人がいるなんて聞いてない…!」という呟きを聞き逃してしまうくらいには、私は幸せボケしているのかもしれない。
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