第18話(2) 私のいる世界

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第18話(2) 私のいる世界

 何ということだ。  今日の放課後にレオンとエリック様、そしてルーカス様の練習を見に行く予定だったのに…うん、まあ、いつもの過ごし方なのだけれど…風邪を引いてしまうとは。 「お嬢様、今日の授業はお休みにしましょうね」  悲しそうな顔をしたソフィが、そっと私の頬を撫でる。ソフィの手、ひんやりとして気持ちがいい…。 「…やはり、昨日の、池が原因かしら…」 「それしかありません! ヒロインめぇ、お嬢様に風邪を引かせるとは! 許せませんっ!」  頬を膨らませて怒った様子のソフィ。私はそんなソフィに困ったように笑いかけて「リリス嬢は大丈夫だったかしら?」と、尋ねた。 「さあ? 知りません、あんな方」  …かなりお怒りの様子ね。 「そんなことより…お嬢様に栄養満点のご飯を作って差し上げなくては!」 「ソフィ、私、アレが食べたい…」 「アレ、ですね?」 「うん、風邪を引いた時だけの、特別なご飯」 「ふふ、楽しみにしていてください」 「えへへ、やったぁ…」  なんだか、熱が上がってきたみたい。頭がぼうっとするわ。ソフィもすぐに気付いてくれて、私の頭を優しく撫でてくれる。 「さ、お昼までゆっくり休んでくださいね」 「うん…」  ソフィの優しい手が心地よくて、私の瞼はすぐに重くなっていく。 「おやすみなさい、お嬢様…」  意識が沈んでいく中、遠くでソフィの声が聞こえた。
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