第18話(2) 私のいる世界

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『シャロン様、なぜこのような事を…!』 『まぁ、リリス嬢。貴女が勝手に池に落ちたのでしょう?』 『あ、あんまりです…』 『なんて汚らわしい。でも、人のモノを奪おうとするその意地汚い根性にピッタリなお姿よ、ふふ』 『…貴女が、シャロン様が私のこの哀れな姿を見て少しでも心を痛めてくれる方だったなら…嘲笑う貴女じゃなかったなら…イーサン殿下は貴女を深く愛していたはずです』 『……なんですって?』 『地位も、美貌も、権力も、財も全てお持ちなのに…貴女は慈しむ心をお持ちではないのね』 『黙りなさい! 汚らわしい、私生児の分際で! この私に、四大公爵家一柱、ナイトベル公爵の娘である私に意見するなど許されません!』 『リリス! 何があった!?』 『イーサン殿下?』 『いえ、何も…私が足を滑らせて池に落ちただけです…』 『大丈夫か? ああ、こんなに体が冷たくなって……シャロン、これはどういうことだ?』 『なにか?』 『お前がリリスを突き飛ばしたのだろう?』 『ふふ、違いますわ。その私生児も自身で仰っていたではありませんか。足を滑らせた、と』 『…ふん。いいか、二度とリリスに近付くな』 『……言われなくても、そのようなみすぼらしい子、私の隣には相応しくありませんわ』 『そのようなことを…人の心はないのか?』 『イーサン殿下こそ、お気は確かですの? その私生児に何の価値が? 貴方の地位を確固たるものにする権力を私は持っている…それをお忘れなきよう』 『シャロン、お前は…可哀想な女だな』  その時の、イーサン殿下の瞳が忘れられない。  その綺麗なサファイヤに、侮蔑と軽蔑、そして憐れみの色が揺れている。  そして私は気付いてしまう。私たちの周りにいる生徒たちの目にもイーサン殿下と同じ色が滲んでいること。  その瞳たちは、私が価値のないものを見る瞳と同じ色をしていたのだ…。
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