第2話(3) 裏切りと亀裂

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 …だめだ。間に合わなかった…。 「……イーサン殿下…」  シャロン嬢の目に映るこの光景は、あまりにも酷い。  胸が肌けたリリスと、ズボンを下ろしているイーサンが執務机の上で抱き合っていたのだ。  シャロン嬢の手から力が抜けたのか、バランスを崩したケーキがボトリと音を立てて床に落ちた。その音で正気に戻ったのか、リリスは「きゃあ!」と叫びながら胸を隠し、イーサンは慌ててズボンを持ち上げている。 「な、なんだ急に? みんなして…!?」  イーサンは混乱しているようだった。俺たちだって混乱している。未だ何も言葉を発せない。いや、これは、もう…アウト…だよな…。  シャロン嬢は目を見開き大粒の涙を流しながら、肩を震わせていた。 「…っ、で、殿下…これは一体…っ!」  そして、一生懸命に言葉を紡ぐ。 「殿下は、私を…う、うらぎ、って、いたのです、ね…?」  まさか俺は、この裏切りに加担していたというのか…? 「しんじ、て…いたのに…っ」  シャロン嬢の言葉に、俺は胸を締め付けられた。 「……うぅっ、…そう、私は、まだ殿下を信じていたのに」  それはとても悲しげで、そして何かを諦めたような笑み。 「信じさせ続けては、下さいませんでしたね…」  シャロン嬢はそう告げると一歩引いて「本当にさようなら、私の恋心」と、小さく呟いた。
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