第19話(1) 記者X

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第19話(1) 記者X

 ノートを破りゴミ箱に棄てた。勉強机に信じられないような罵倒文を書いた。教科書を破りベランダから投げ捨てた。競技服を破りロッカーに入れた。御手洗いで水をかけた。食堂で足を引っ掛けた。絵画授業で先生が高い評価をつけた絵を破った…。  私が今までにリリス嬢に行ったとされる悪行疑惑の数々。とにかく何かを破らないと気がすまないとみた。 「…『陰湿! シャロン・ナイトベル公爵令嬢の悪行!? 入学してから今日までの悲しい学園生活を涙して語るリリス・スイートラバー子爵令嬢の独占インタビュー!』…」  朝、学園内の共有エリアにある掲示板に貼られた一枚の新聞をみつけたので、私はタイトルを読み上げた。  私の隣にいたソフィは顔を真っ赤にしてその新聞を乱暴に剥がす。 「確かに、ゲームのシャロンお嬢様が行った数々ではありますが……私のお嬢様がこんなことをする筈ないじゃありませんかっ!」  そう憤慨しながら剥がした新聞をグシャグシャと両手内に丸めて握った。そして掲示板の傍らにあったゴミ箱へ、ばすん! と勢いよく投げ捨てる。 「…ソフィ、落ち着いて。私は大丈夫だから」  現にここに辿り着くまでに全員ではないがチラホラと私を見て顔を顰める生徒が数名いた。  この新聞を読んで…この内容を信じた方たちだったのだなと納得した。 「私が大丈夫ではありませんよっ」  私は、いつもソフィがしてくれるように…ギュッと私の専属メイドの手を握る。 「私はこの悪行とされる数々に身に覚えがない。やってもいない事に証拠なんて存在しないわ。きっと、時期に収まるから」 「お、お嬢様……」 「だから、ね、ソフィ。こんな事で怒っていたら疲れちゃうわ」  私はソフィにニコリと微笑んだ。
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