傷心お嬢様の恋活奮闘記 〜お嬢様、何もせずにイケメンが降って湧いてくるのは物語の中だけなのです〜

第１９話(２) 王都のとある場所にて

「『華麗なるお嬢様の観察日記』って、ただの偶像(アイドル)追っかけ記事じゃない！」

「読者ウケがいいだろ？」

「ふざけないで！」

　いや、俺は本気なんだけど？　そもそも、ずっと観察してきたが、あの公爵令嬢のありのままを書くとそんな記事しか出来ないんだよなぁ？

「私が謹慎したことも、イーサンが留学させられたのも、エリックやハリスがあの女と仲良くしているのも、学園で私の方が立場が悪くなっているのも…全部あの女が仕組んだことだ！　『ヒロイン』の私を陥れようとしてるあの腹黒女が、何かしたに決まってる！」

「はいはい、またその話ね」

「こんな記事じゃシャロンの立場は悪くなんてならない…エリックもハリスも全然使えないしっ……やっとの思いであんたを探し出したっていうのに役に立たないし…ああ、もう！　全然上手くいかない！」

　お嬢さんが喚き散らして暴れるので、俺はコーヒーを飲みながら「物壊すなよー」とだけ注意しておいた。

　ここは王都のとある場所。ヴァネッサン伯爵の息子が間者を学園に潜ませているけれど、俺を捕まえられる筈がない。

　だって俺、あの学園の生徒じゃねぇし。