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「ま、待てシャロン! まだ入れる前だ!」
ズボンを履き終わらないうちに、イーサンはシャロンの元へと駆け出し手を伸ばす。あろう事か、イーサン、そのようなことを…!
伸ばされた手を視界に捉えたシャロン嬢は、顔を歪め逃げるように後退した。
「さ、触らないで!」
そう拒絶の言葉を彼女が叫んでも、メイドがシャロン嬢を庇うように抱きしめても、それでもまだイーサンはシャロン嬢に触れようとしたから。
俺は思わずカッとなってイーサンの顔を殴り付けてしまった。
倒れ込むイーサンが、ケーキの山に沈み生クリームにまみれる。
「イーサン! お前! 自分が何をしたか分かっているのか!?」
殴って、一度叫ぶともう止まらなかった。
「一体何を考えているんだ! 何も考えていないのか!? ふざけるな!」
「エリック! よせ!」
慌てたハリスが俺を後ろから抑えようと、俺の脇に腕を入れて来た。羽交い締めだ。
「そんなんで国を引っ張っていく王になれるのかよ! 婚約者でさえこんなに傷つけて! お前には心底呆れた!」
「エリック先輩! 落ち着いて下さい!」
ラザークまでもが俺の腰に抱き着いて参戦し、ようやく勢いを失った俺は、2人に抑えられながらも荒れた呼吸を整えることなくイーサンを睨みつけた。
イーサンは放心状態に床に転がったまま、俺たちではないどこかを見つめていた。
少し落ち着きを取り戻した俺は、チラリと後ろをみるとそこにはもうシャロン嬢の姿は無かった。
「…君たちのお話しは終わったかい?」
そこにゾクリとする、冷気を含んだ声。
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