第2話(3) 裏切りと亀裂

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「ま、待てシャロン! まだ入れる前だ!」  ズボンを履き終わらないうちに、イーサンはシャロンの元へと駆け出し手を伸ばす。あろう事か、イーサン、そのようなことを…!  伸ばされた手を視界に捉えたシャロン嬢は、顔を歪め逃げるように後退した。 「さ、触らないで!」  そう拒絶の言葉を彼女が叫んでも、メイドがシャロン嬢を庇うように抱きしめても、それでもまだイーサンはシャロン嬢に触れようとしたから。  俺は思わずカッとなってイーサンの顔を殴り付けてしまった。  倒れ込むイーサンが、ケーキの山に沈み生クリームにまみれる。 「イーサン! お前! 自分が何をしたか分かっているのか!?」  殴って、一度叫ぶともう止まらなかった。 「一体何を考えているんだ! 何も考えていないのか!? ふざけるな!」 「エリック! よせ!」  慌てたハリスが俺を後ろから抑えようと、俺の脇に腕を入れて来た。羽交い締めだ。 「そんなんで国を引っ張っていく王になれるのかよ! 婚約者でさえこんなに傷つけて! お前には心底呆れた!」 「エリック先輩! 落ち着いて下さい!」  ラザークまでもが俺の腰に抱き着いて参戦し、ようやく勢いを失った俺は、2人に抑えられながらも荒れた呼吸を整えることなくイーサンを睨みつけた。  イーサンは放心状態に床に転がったまま、俺たちではないどこかを見つめていた。  少し落ち着きを取り戻した俺は、チラリと後ろをみるとそこにはもうシャロン嬢の姿は無かった。 「…君たちのお話しは終わったかい?」  そこにゾクリとする、冷気を含んだ声。
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