第19話(3) 不運と不幸と女神の来訪

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「ふうん? じゃ、ありがたく」  俺は職業柄、知りたいと思うととことん追求してしまう性格だ。新発売のコーラ…どんな飲み物なのか気になる。  そんな表情はおくびにも出さず、澄ました顔でオヤジからコーラと栓抜きを受け取り、プシッと栓をはずした。  その瞬間、コーラが噴き出てきたのだ。 「うわぁ!?」  驚いた俺は声をあげる。泥水に続き、コーラを被るとは…。しかも今回は顔から被った。 「マクソンくん! 大丈夫か!?」  呆然と立ち尽くす俺に、オヤジは慌てて持っていたハンカチで顔を拭ってくれた。 「瓶を振ると栓を開けた時に、炭酸が噴き出すことがあるらしいんだ。だから、振らないように気をつけていたのに……すまない」 「…いや、いいんだ。帰ったら風呂に入るつもりだったから。気にすんなよ」  俺は笑って、小瓶に少し残ったコーラを飲み干した。 「…しかし、うめぇな」  色が黒いことには驚いたが、こんなに美味い飲み物があったとは。俺はオヤジに空になった小瓶を返すと、手を振りそのままその場を後にした。さっさと帰って風呂に入りたかったからだ。 「にしても、本当についてねぇ…」  体中がベタベタだ。気持ち悪い。 「にゃあ」  帰路を急ぐ俺の目の前を、黒猫が横切っていった。 「…………」  なんなんだ? 何がどうなのか自分でも上手く説明できないが、猛烈に嫌な予感がする…。
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