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「…!」
俺は嫌な予感から顔を歪めた。緊張感から、心音を打つ鐘が早くなる。なんとなく、扉を開けたくない。開けてはいけない気がする。
何かとんでもない事に、巻き込まれてしまう…そんな気がするんだ…!
いや、そもそもあのお嬢さん…リリス・スイートラバーが俺の目の前に現れてから、すでに巻き込まれてしまったようにも思える。
「いらっしゃいませんか? マイケル・マクソンさん?」
透き通るような綺麗な女の声がした。動揺していた俺は、この声の主にすぐに気付けなかった。
「…ああ、ちょっと待ってくれ。今開けるから」
俺は報告書の亡骸を一旦放置して、新しいズボンとシャツを着込み扉に向かう。
「いっ…!?」
その途中で、備え付けの棚の角で小指を打ってしまう。あまりの痛さに俺は悶え苦しみながら蹲った。
「いかがなさいましたか? 大きな音がしましたけれど…」
俺を待つ女性は心配そうな声色で、俺はなんとか「いや、大丈夫です…」と声を振り絞る。
改めて扉に向かいドアノブに触れた。パチリと静電気が走る。普段はそんなことないのに…。俺はかつてない緊張感から思わずゴクリと生唾を飲み込む。冷や汗の滲む手でそっとドアノブを捻り扉を開けた。
「いらっしゃい。記者のマイケル・マクソンです。本日はどのような御用件で…」
俺はそう言いながら、扉の向こうに立っていた女に目を向けて……固まった。
「お初にお目にかかります。シャロン・ナイトベルと申します」
そう言って綺麗なカーテシーをした後に、目の前に立つ月の女神のように美しい少女は真っ直ぐに俺を見つめて微笑んだのだった。
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