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目の前にコトリと見慣れたカップを置かれたことで、俺は気を取り直して訪ね人を改めて見据えた。「ありがとうございます」とにこやかに笑い、専属メイドが淹れてくれたコーヒーをひと口飲む。
「! うめぇ…」
なんだよこれ…これがあのインスタントコーヒー? 水もポットもコーヒーも、カップすら普段から使っているものの筈なのに…淹れる人が違うと何故こうも旨味が違うんだ? おそるべし、ナイトベル公爵家のメイド…。
「マクソンさん、お砂糖とミルクを少々使わせて頂きました。私のお嬢様には、ブラックコーヒーはまだお早いですので…」
「も、もうっ、ソフィ! 私だってブラックコーヒーくらい飲めるわ! …たぶん…」
シャロン・ナイトベルは頬を赤く染めて膨らましていた。…可愛らしいな、おい。
「ははっ、構いません。どうぞ、お好きなだけお使いください」
俺は無意識に笑っていた自分に内心驚いてしまった。自然と笑うのは、いつぶりだろうか…。って、だめだ、警戒しなくては。シャロン・ナイトベルとこの専属メイドはまだ得体の知れないのだから。
「…マクソンさん、これを」
シャロン・ナイトベルがおもむろに何かを取り出し、俺の目の前に差し出してきた。
これは…。
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