第2話(3) 裏切りと亀裂

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 日暮れ時の西陽を浴びて、赤く染まるシモン先輩が妖しく微笑んでいた。いつもの朗らかな笑みではなく、冷え切った微笑み。  シモン先輩は静かにイーサンの元へ近付くと、足を上げ勢い良くイーサンの顔の真横を踏み込んだ。 「やぁ、イーサン殿下。ご無沙汰ですね」  そうして穏やかに挨拶するのだが、背筋がゾッとする。一瞬、イーサンの顔が踏み潰されたのかと思ったのだ。  放心状態だったイーサンも、怯えるようにシモン先輩を見上げていた。 「…この件は、然るべき方法で然るべき責任を。とってもらいます」  いつも笑顔の彼が真顔でそれだけを告げると、早々にこの部屋を後にして去って行った。  シモン先輩が踏み込んだところには、粉々に割れたチョコレートプレートがあった。  それは、シャロン嬢が自らチョコで書き込んだ『祝 6年目記念日』と書かれていたものだった。今ではもう、何と書いてあったのか読み取れない。  これは、あんまりではないか?  あんまりにも…酷い仕打ち…シャロン嬢に対しても、そして…。 「……俺たちも、俺たちだって、イーサンを信じていたんだ…」 「…エリック、僕たちも行こう」  ハリスに軽く肩を叩かれて、俺は力なく頷いた。 「殿下、ズボンを履いて下さい…その…立てますか?」  ラザークがイーサンを立たせている所をぼーっと眺めていると、ハリスに部屋を出るよう促される。 「…あぁ。あと、リリス。もう今後一切、僕たちには関わらないでね」 「え? なんで私が…!」  部屋を出る前に、ハリスがリリスに告げる。リリスは何か反論していたが、俺たちの耳には届かなかった。  これから王宮に行かなくては…。  あ、レオンとの夜練の約束、守れないな…。
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