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「他にもマクソンさんの記事を読みました。『ペティ婆さんの格言』や『野良猫散歩』なども!」
王都の外れに住む100歳を超える長生きペティ婆さんの…だいぶん痴呆が入っていたが…格言っぽいものを書き綴ったものや、ひたすら野良猫を追いかけて通った街並み紹介の記事だ。
自分で言うのもなんだが、くそつまんねぇ内容となっている。最早読むことが時間の無駄とされるような記事が全く売れるはずもなく。もちろん、母国への報告書だ。
俺は怯えた顔で目の前の女神を見つめた。
誰があんな記事を読む? 暗号文だと知ってないと読むやつなんて…もしかして、俺の正体を知っていると伝えたいのか…?
女神はキョトンとした表情をしたあとに、とびきりの笑顔で「私、貴方の記事のファンです!」と言った。
震えあがった。だって、おかしい。こんなつまらない記事を熟読し、ファンだと? あの、完璧令嬢の代名詞のようなシャロン・ナイトベルが? なんて見えすいた嘘を!
「…だからこれを見た時、悲しくもあり、そして怒りを覚えました」
笑顔を浮かべていたシャロン・ナイトベルの表情に陰りが出る。雰囲気が変わった。バサリと置かれた見慣れない記事に俺は目を通していく。
「『号外! シャロン・ナイトベルの華麗なる男性経歴! イーサン殿下との破局の理由とは…シャロンお嬢様は騎士がお好き』……?」
声に出して見出しを読み上げる。まぁ、なんとも醜聞好きな大衆にウケが良さそうな見出しだこと。そんな事を思いながら記事の内容を読み進めて驚いた。
そこには若干16歳の少女とは思えないほどの爛れた性生活が大暴露されていたのだ。
「え? え? え?」と記事とシャロン・ナイトベルを交互に見ていると、ムッとした顔の専属メイドが「私のお嬢様は純粋なお方です! 事実無根の中傷でございます!」と声を荒げた。
「…やはり、貴方が書いた記事ではなかったのですね」
俺の様子を見てシャロン・ナイトベルは息を吐く。ほっとしたような…でも、とても悲しそうな表情だ。
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