第19話(5) メイドとの取引

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 とにかく、誤解が解けてよかった…。  俺は決してストーカーではないし、変態でもない。至って普通の諜報員だ。  帰り支度をしているシャロン・ナイトベルと専属メイドを見送りながら、俺はホッと胸を撫で下ろす。  それに、俺の本当の正体はバレていない。知られたのは仮の姿である『マイケル・マクソン』が『記者X』ということだけで…。  …ん? 待てよ。ヴァネッサン伯爵家の間者でも俺に辿り着けなかったのに、この少女たちはどうやって、俺まで辿り着いたんだ? 「では、失礼いたします。本日はお時間をありがとうございました」  丁寧な帰りの挨拶をするシャロン・ナイトベルの声に俺はハッと我に帰った。ついさっき撫で下ろしたばかりの心臓が、再びばくばくと嫌な鼓動を打つ。 「…………」  俺が言葉を発せずにいると、彼女はこてんと首を傾げ可愛らしい仕草で俺を見つめていた。その隣に立つ専属メイドがそっと俺の隣までやって来て、耳元で優しく囁く。 「…もし、貴方の秘密の依頼主についてお話したくなりましたら私の元までいらっしゃってください。ゼノ・コールマンさん」
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