第20話(1) ストーカーの次は…

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第20話(1) ストーカーの次は…

「シャロン、大変なことになってしまった…」 「あら、お兄様。大丈夫ですか? お顔色が悪いわ」  とある放課後、学園の共同エリアにあるお気に入りの東屋でレオン、エリック様、ルーカス様…まあ、いつもの顔ぶれでお茶会を楽しんでいると、珍しく取り乱した様子で顔面蒼白のお兄様がやって来たのだ。 「シモン様、こちらを…」 「あ、ありがとう。ソフィ」  慌ただしく席につき、ソフィの淹れた紅茶を受け取ったお兄様はそれを一気に飲み干した。熱くはないのかしら…。  どうやら走ってここまでやってきたらしいお兄様。  紅潮した顔、荒い呼吸、そして鎖骨を流れ落ちる汗…色気ある表情を少し歪めて首元のタイを緩めたものだから、お兄様に釣られて周りに集まってきていた女子生徒たちから「きゃあああ!」と、もう叫び声に近いピンク色の声が飛んでくる。中には顔を真っ赤にしてフラリと倒れる者までいた。  …お兄様と一緒にいると、よく見かける光景なのですっかり慣れてしまっていた私は、女子生徒のまるで暴徒のような騒ぎように怯えた様子のレオンを横目に、ゆっくりと紅茶を味わっていた。  騒ぐ女子生徒の中にリリス嬢の姿を見つけた。  …あの方はなにをしているの? イーサン殿下と恋仲になっていたと思ったら、次はお兄様にお熱中ということ?  それはあまりにも…気の多いことね…。私は内心でリリス嬢に呆れながらも、目の前のお兄様に向き合った。 「それで、お兄様。大変なことって?」
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