第20話(1) ストーカーの次は…

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「シャロン、よくお聞き。君が婚約者候補に選ばれた背景には、イーサン殿下との件で王族とナイトベル公爵家との間に確執があると言うイメージを払拭させるために選ばれたという理由があるんだ。つまり、王党派家門としての建前だけの候補者選定だ。だから、シャロンが本当に婚約者として選ばれることはない、はずだ…」  お兄様の言葉を聞き、私はホッと胸を撫で下ろした。 「良かった…なんだ、それなら私が選ばれることはないわね」 「待ってください」  安堵する私をよそに、レオンの強張った声がお兄様に向けられる。 「なぜ、『選ばれない』と断言されないんですか?」  あ…、たしかに。私はやっと気付く。  そういった背景があった候補者選定なら、お兄様はこうして慌ててやって来ていないはず。他に何かあるのね…? 「……それが…」  お兄様の言葉の続きを、この場にいる者全てが固唾を呑んで待っていた。 「シャロンをとりあえずの婚約者候補にという話は前から出ていたのだけれど、それよりもセドリック王太子殿下が強く望まれたんだよ…」 「セドリック王太子殿下が?」 「シャロン、セドリック王太子殿下と親しいのかい?」  お兄様の不安げにされているお顔を、私はパチパチとゆっくり瞬きしながら見つめた。 「いいえ、セドリック王太子殿下とは剣技大会の日に初めてご挨拶させて頂いた以来だわ」  それ以降の接点などない。なのに、なぜ…。
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