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第3話(1) 悲しみの暮れ、始動
王立学園の生徒は全て、寮生活を義務付けられている。学芸都市に自室として与えられたアパートメントの一室で、私はソフィに抱きしめられながら泣いていた。
「お嬢様…お嬢様…申し訳ありません。まさか、あのような濡れ場に出くわすとは…」
ソフィも自身を強く責めているようで、痛ましい顔をしていた。
「…本来、学園の設立記念日のイベントは、イーサン王太子とリリス様の秘密のキス…なのに何故…あんな場面に…」
「…大丈夫よ、ソフィ。辛いのは今だけ、今だけだから」
「お嬢様…」
「辛いことは2人で半分…そうすれば早く元気になれるって教えてくれたのは貴女よ。…私と一緒に泣いてくれる? ソフィ…」
「もちろんです、お嬢様。…早く元気になりましょうね」
ひとしきり泣いて、日がすっかり沈んだ時刻、部屋にコンコンとノックの音がした。
「はい、どちら様でしょうか」とソフィが声をかけると、「私だよ」と言うお兄様の声が聞こえてきた。私が頷いたのを確認したソフィが客人を迎えに玄関へと向かう。お兄様はソフィを後ろに従え、すぐに姿を現した。
「シャロン、遅くなってごめんね」
お兄様も傷付いたような痛ましい表情を浮かべて大きく両手を広げてみせるので、流れきったはずの涙がまたじわりと染み出してきた。
「お兄様!」
「シャロン! 辛かったね…」
お兄様の胸に飛び込んだと同時に抱き留められて、私はまた泣いた。
…自分が思っていたよりも、私は殿下に恋慕していたらしい。裏切りを目の当たりにし傷付いたことでやっと気付き、そしてそれがとても悲しかった。
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