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「…私はセドリック王太子殿下のお考えが分からない。彼は幼いからと侮ってはいけない王子だ、今回のことでよく分かったよ…」
「お兄様?」
お兄様は疲れた様子で私と同じ色の髪をかきあげながら言う。
「セドリック王太子殿下が今、ナイトベル公爵家にいらっしゃる。先触れもなく突然、挨拶をしたいとやって来たんだ。用意周到に父上の帰宅時を狙ってね。王太子殿下を追い返すわけにはいかないからね…だから私が、シャロンを迎えに来たんだよ」
「はへ?」
我ながら間抜けな声が出たが、仕方ないだろう。だって、セドリック王太子殿下の行動は、ただの婚約者候補への対応にしてはちょっと…。
「行き過ぎているな。セドリック王太子殿下は絶対にシャロン嬢のことが好きだ…」
ルーカス様の低い声が今日はやけに重く感じる。
「冗談じゃ済まないぞ…そうだ、ハリス。ハリスにセドリック王太子殿下を説得して貰おう! あいつ、側仕えだから…」
エリック様がいい案だと勢いよく言ったところで、肩を小刻みに震わせ俯いていたレオンが私の名を呼んだ。
「シェリー…」
「え! レオン? なぜ泣いているの!?」
顔をあげたレオンはポロポロと涙をこぼしていた。私たちはギョッとする。顔を赤らめてとても悲しそうに泣くレオンが子犬みたいで可愛いと内心ときめきながらも、私はレオンの側に駆け寄り背をさする。
いつもはぴんと伸びた堂々とした背中が、今は小さく丸まっていた。
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