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第20話(2) 天使に墜落しそうなお嬢様
「お待たせいたしました。シャロン・ナイトベルでございます」
公爵家に到着すると、私はソフィを連れてまず支度準備に入った。相手は王族だ、身だしなみを怠ることは出来ない。
エステ…は今回はさすがに省略し、湯浴みで身体を清めてドレスに袖を通した。上気した肌に白粉を軽くはたいて薄く紅をひく。普段下ろしている髪はアップにして上品に。ソフィの素晴らしき手腕と、公爵家の有能なメイドたちのおかげで私の用意は予定よりも幾分か早く終わった。
「シャロン、入るよ」
お兄様だ。おそらく迎えに来たのだろう。「はい」と答えると、扉が開きやはりお兄様が立っていた。その後ろにはリチャードとレオンの姿も。
私を見て頬を染めるレオンにくすぐったい気持ちになり、照れながらも「どうかしら?」と尋ねてみる。
「シェリー…君はきっと、ディアナ様よりも美しい」
うっとりとした金の瞳に見つめられた私は、とても嬉しくて思わずレオンに抱きついてしまった。
「お嬢様! 身だしなみが崩れます!」
すかさず飛んできたソフィのお叱りに私は悪戯っ子のように舌を出して肩をすくめた。
「シャロン、とても綺麗だよ。レオンのディアナ姫をエスコートできる栄誉に深く感謝しないとね」
「ふふ、お兄様ったら」
私とお兄様は笑い合って、お兄様に差し出された手に自身の手を添える。
お兄様は私の手を大切そうに優しく握ってくれると、優しい笑顔から緊張感ある面持ちに切り替えて「行こうか」と、言った。
私たちは神妙な面持ちで頷く。
レオンとソフィとリチャードを従えて、私たち兄妹はセドリック王太子殿下が待つ食堂へと向かったのだった。
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