第20話(2) 天使に墜落しそうなお嬢様

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「まさか我が家に、セドリック王太子殿下にお越し頂けるとは光栄の限りです」  まず運ばれてきたアミューズのカナッペをつついていると、お父様がセドリック王太子殿下にそう言った。  セドリック王太子殿下は天使のような可愛らしい笑顔を浮かべて「私もナイトベル公爵家でこのような楽しいひと時を過ごせて嬉しい」と返していた。  私はチラリとセドリック王太子殿下に目を向ける。王太子殿下はその小さなお口に、ひと口大サイズのカナッペを一生懸命に運んでいた。  ……なんだか、とっても可愛らしいわね。そういえば、私、昔から弟か妹が欲しかったのよね…。  数年前に性の知識がまだ無かった私は、お父様とお母様に弟か妹が欲しいのだと駄々を捏ねて大騒ぎしたことがあった。  お母様は「あらあら、まあ。どうします、旦那様?」と楽しそうに笑っていたが、お父様はお顔を真っ赤にさせて固まっていらっしゃったわ。お兄様はあまり聞きたくなさそうに顔を歪めていたことを覚えている。
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