第20話(2) 天使に墜落しそうなお嬢様

4/5
前へ
/320ページ
次へ
 そんなことを思い出していると、次にオードブルが運ばれてきた。色鮮やかなテリーヌだ。  私は慣れた手つきでテリーヌにナイフを差し入れる。気になってセドリック王太子殿下に再び目をやった。  どうやら、まだ小さな手には少しばかり大きいのか、ナイフとフォークを扱う手つきがぎこちない。  気付けば、私だけでなくお父様やお兄様たちもセドリック王太子殿下の様子を伺っていた。  お父様なんてハラハラとした様子で、見守っている。セドリック王太子殿下はなんとか切り分けたテリーヌを口に運び、美味しかったのかふにゃりと表情を和らげていた。  守りたい…! その笑顔…!  と、それを見た私たちは思わず目尻を下げてそんなことを考えたことだろう。幼い弟がいる生活とは、こんな感じなのかしら…素敵だわ。  …それにしても、王族だというのにセドリック王太子殿下は畏まったコース料理に不慣れのようだ。  ソフィからはあらかじめ、前世の知識のセドリック殿下について聞いている。病気の王妃様とともに陽の当たらない離宮でひっそりと暮らしていたのだと。  使用人からの虐めや、助けてくれない王陛下、無関心な側妃様…そんな環境下で過ごした幼少期は、セドリック殿下の性格を歪めてしまったのだ…。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加