第20話(2) 天使に墜落しそうなお嬢様

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 …こんな幼い少年が愛に飢えて苦しんでいることに、私は胸が痛くなる。  それと同時に、殿下のお心を救ってさしあげたい…と心の底から思うのだ。  ……いえ、正直にいうわ。今からでも誰かが十分な愛情を注いであげればセドリック王太子殿下のヤンデレ化は防げるのではないかしら? そうすれば、今後私に降りかかるかもしれない不穏要素は取り除けるのでは? 歳の半分も下になる幼いセドリック王太子殿下の婚約者候補という訳の分からないこの状況を抜け出せるのでは?  うん! だから総合的にみても、私がセドリック王太子殿下を弟のように可愛がることに何の問題もないわよね?  と、自分本意な思考で下心を抱えながらテリーヌを美味しそうに食す可愛らしい天使を熱心に見つめた。  なんて愛らしいの…! あの柔らかそうなプラチナブロンドを撫でて撫でて撫でくりまわしたいわ!  後からソフィに聞いたのだが…「あの時の、セドリック王太子殿下を見つめるお嬢様の目は、誠に…獲物を狙う猫のようでした」と言われたのだけれど…そんなに顔に出てた?  それから「お嬢様、どうかセドリック王太子殿下の愛らしさに惑わされずにお気をつけてくださいね?」と念を押されてしまった私は「わ、わかってるわ!」と内心の戸惑いをひた隠しながら、強くそう答えた。
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