第20話(3) 専属メイドの決意

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「…けれど、そんなに問題かしら? 昨晩なんてまるで姉弟のように楽しく過ごしただけよ? もっと言えば、散歩から絵本の読み聞かせまで、護衛でついてくれていたレオンと『将来子どもが出来たらこんな風に過ごすのかしら』と妄想が進んで…とても満足できる夜だったわ!」 「…後半がお嬢様の本音なのですね」  厳しい顔のソフィだったが、私がニコニコと笑っていると小さく息を吐いて呆れた顔をした。 「お嬢様はヤンデレの恐ろしさを分かっていないのです…」  ソフィが肩を落としながらそう言った時、扉の向こうでメイドが呼びかけてきた。ソフィはすぐに扉へ向かうとメイドを室内に招き入れ何やら事情を聞き、そして少し顔色を悪くして戻ってきたのだ。 「どうしたの?」 「お嬢様…セドリック王太子殿下がお見えです」 「え…私の部屋に?」  昨晩は遅い時間だということで公爵家に一泊したセドリック王太子殿下だったが、朝にはここを立つと思っていたので驚いた。  もちろん、お見送りはするつもりだったが…もしかして、別れの挨拶をわざわざ言いに来てくださったのかしら? 「私が出迎えるわ」 「はい、お嬢様」  私はソフィを従えて、今待合室で待っているはずの殿下の元へ向かうために自室をあとにし……扉を出た瞬間に、視界の下端にこの国には珍しい白に近いプラチナブロンドの色味が入った。 「え?」 「ひい!」  戸惑う私と怯えるソフィ。目を向ければ、やはりセドリック王太子殿下が愛らしい笑顔を浮かべてこちらを見上げていたのだ。
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