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「せ、セドリック王太子殿下?」
「おはよう御座います」
晴れやかな笑顔で挨拶する殿下に戸惑いながらも挨拶を返しながら、彼の後ろに控えるメイドに目を向ける。
メイドが青ざめた顔を横に振っているところをみると、殿下がここまで強行突破してやって来たのだろうと察した。
「こんなところまで…いかがなさいましたか?」
私が迎えに行こうと思っていた矢先に、先回りして部屋の前で待たれているとは…驚いたのと同時に不信感が募る。
だって、恋人でも友人でも…ましてや婚約者でもないのだから、許可もなく異性の自室の真ん前にまで訪ねてくるなんて常識外れの行動よ。
私が思わず顔を顰めていると、殿下はふと不安そうな顔で私を見つめた。
「あ…迷惑、でしたか?」
う…可愛いわね…! うるりと揺れる大きな青い目が私を見上げている。まるで、子犬のようだ。
「迷惑、というより…婚約者でもない異性が自室の前まで訪ねてくれば、誰でも戸惑います」
「そ、うなのですね…私、失礼しました…わかっていなくて…」
かあっと顔を赤らめて自身の無知さを恥じている様子のセドリック王太子殿下。
昨日の晩餐会からでも察せられるように、今までに王族としてまともな教育を受けてきていないようだし、それにまだ殿下は幼い。
だからと言って、このまま見過ごせば殿下のためにならない。ここは殿下を思い、あえて厳しいことを言ってあげるのも殿下のためになるだろう。
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