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「……ところでシャロンお姉ちゃん、成り行きでこの手紙を見つけたのですが…イーサンお兄様と文通しているのですね?」
「え? ああ、そうですね…。少し前に何故かイーサン殿下から数枚にわたる謝罪の手紙が届いて…それから、なんとなくお互いの近況報告などをしていますね」
殿下の小さな手にペラリと揺れる書きかけの便箋。私がイーサン殿下宛に書いているものだった。
「へぇ、そうなんですね…?」
何故そんなことを聞くのかしら? ニコニコと笑う殿下を見つめながら不思議に思い首を傾げていると、ソフィが怯えたような声色で「せ、セドリック王太子殿下の目が全然笑っていない…」と呟いていた。
「殿下。書き途中とはいえ、人の手紙を勝手に見るものではありませんよ?」
「はい、分かりました。…でもどうしてもシャロンお姉ちゃんのことは全部知っておきたくて……この手紙によく出てくる『レオン』って人のこととか、すっごく気になります。昨日一緒にいた護衛騎士ですよね?」
「レオンは私の最愛の人なのですわ!」
「………へぇ〜?」
「とても素敵な方でしょう?」
「………そうですねぇ?」
「まあ、やっぱり! うふふ」
私と殿下のやり取りを見ていたソフィが青い顔で私に耳打ちしてくる。
「お嬢様、喜んでいる場合ではないです! セドリック王太子殿下の様子をよく見てください! ヤンデレオーラを醸し出してますよ! あまり刺激してはダメです!」
「………『レオン』がいなくなったら、シャロンお姉ちゃんはずっと私だけのお姉ちゃんになるのかなぁ?」
「ほらぁ! 危険ですお嬢様は逃げて!」
「うふふ、殿下ったら。ヤキモチですの? 殿下のものにはなれませんが、寂しい時はいつでも遊びに来てくださいね」
「はい! では、いっぱい遊びに行きますね?」
「なに言質とられてんですかぁ! このままじゃダメだ! 私がしっかりとお嬢様をお守りしなくては! 早くゼノと手を組まないと!」
こうして、セドリック王太子殿下が公爵家をたつ時間まで、楽しいひとときを過ごしたのだった。
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