第20話(4) 『姫と光の騎士』

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第20話(4) 『姫と光の騎士』

『セドリック王子、まずはナイトベル公爵家の弱みを握りましょう』  魔女の助言を受けて私は行動に移した。 『私の言う通りにすれば大丈夫。私はこの世界のこと、なんでも知っているんですから』  口癖のようにそう何度も言う魔女は言葉の通り、私の知っていることから知らないことまで何でも知っていた。王党派と貴族派の勢力図とか、四大公爵家の裏側事情とか。  特に私自身について聞かされた内容には驚いた。側妃様との確執、王陛下との関係性、そして母上の心の病気と未来に死が待ち受けていること…。  母上の病気については、一切公言されていない。なのに、この魔女はその事実を知っており、まるで今まで側で見てきたのではないかと思うほど、私や母上、そして使用人たちとのやり取りも知っていたのだ。  私は魔女が恐ろしいと感じた。それと同時に魔女の言葉に信憑性が出てきて、あのナイトベル公爵家にも闇があるのだという話をすんなりと信じた。  年々症状が重くなる病気の公爵夫人…ナイトベル公爵家は枯れていく華と比例するように輝きを失っていき、愛妻家である公爵閣下は妻の病気を治すために、文字通りなんでもした。それが例え、倫理に反することでも…。  そんな冷酷な父親を見て育った小公爵は父を恥じ、仲は良くないと聞いた。そして、最愛の妹だけでも守ろうと誓う小公爵の気持ちに反して、公爵令嬢は人を思いやる心を持たない悪女であったのだ。  それが、魔女に聞いたナイトベル公爵家の実態。 剣技大会の日に挨拶した時に感じた印象とはだいぶ違うが、貴族という生き物は見栄を張るから…。
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