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私はナイトベル公爵家を崩落させる第一歩のため、手っ取り早くシャロン・ナイトベルを婚約者候補として強く望む姿勢を見せて近付いた。
少し強引であったが、『婚約者候補』と仲良くなりたい『王太子殿下』として今回のようにまんまとナイトベル公爵邸へと入り込む。公爵家の弱味を握るためだ。
悪の巣窟に飛び込む気持ちで挑んだ、公爵家での晩餐会。終わった頃には、私の頭にはクエスチョンマークが幾つも飛び交っていた。
まず第一に、公爵夫人の病気? とても元気じゃないか。なんなら肌艶がよく娘のシャロン嬢と並んで姉妹と説明されても疑いようのない若々しさ。
さらには、一見冷たそうに見えるが公爵閣下の滲み出す愛情深さ。小公爵ともよく会話を交わしていてどう見ても不仲に見えない。
公爵令嬢も悪女に似つかわしくないほど、のんびりとした性格のようだ。マナーに不慣れな私の様子をハラハラとした様子で見守っていたことに気付いている。
…むしろ、公爵家全員が私を気遣い配慮してくれていた。
小公爵が譲ってくれたデザートを平らげた後になってそのことに気付き、未だかつて他人の優しさに触れてこなかった私はなんとも気恥ずかしくも居心地の良さを感じた。
『家族』ってこういうものなのかな…。
胸の奥に広がる温かさを感じながらそんなことを頭の中で呟いて、同時に彼らの満たされたような顔が許せない。
『私の家族』は、どうして……って。
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