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正直、内容に感情移入はあまり出来なかったが、途中に出てきた魔女に操られたドラゴンが気になった。
大昔から生きてきたドラゴンで人間に恐れ嫌われながらも人里を襲うことなくひっそりと暮らしていたドラゴンだったが、魔女に唆されて人間の愚かさや卑しさを憎むようになるのだ。
まんまと魔女に操られた憐れなドラゴンは光の騎士に倒されてしまうのだけれど…。
「ドラゴンは倒される時、何を思ったんだろう?」
私がポツリと疑問を口にすると、シャロン嬢は少し悲しそうな顔をした。
「さあ…私には分かりかねますね。ですが、幸せでは、なかったと思います」
そう答えたシャロン嬢はどこか遠くを見つめていた。初めてみせる冷たい表情に、どこか魔女が言う悪女の表情を見た気がして心臓がドキリとした。
「…シャロン嬢も、ドラゴンを倒すことが正解だと思うかい?」
「……殿下、私はこう思うのです。きっと、誰しもの心に『ドラゴン』はいます。だから…全てを倒してしまうことが正しいとは思いません」
「シャロン嬢の中にも『ドラゴン』がいるの?」
「ええ、いますよ。でも私には皆がいてくれるから、ドラゴンにならずにすんでいるのだと思います」
にっこりと微笑むシャロン嬢を見て、じゃあ私は? と思った。誰もいない私は、いつか『ドラゴン』になるのかな?
不安感に支配された私はふと自身の頬に触れた。その後に手の甲を見る。まだ鱗はない…。
『いつか』じゃないんだ、きっと私はもう『ドラゴン』だ。
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