83人が本棚に入れています
本棚に追加
その日はナイトベル公爵家に泊まり、翌日に王宮へ戻ることになった。
晩餐会やシャロン嬢と過ごす中で公爵家の悪事に繋がる証拠を何も得ていないこともあり、私は思い切ってシャロン嬢の部屋を訪ねることにした。
始めは怒った様子の彼女だったが、私が甘えてみせると頬を緩めていた。…扱いやすい人だな。
シャロン嬢とソフィという専属メイドがいない隙に、部屋の中を捜索した。
何か、悪事を指示する文書などないかと机を漁る。しかし出てきたのは、イーサンお兄様に宛てられた書き途中の手紙が出てきたのみ。
他には、まあ…おそらくシャロン嬢自作のロマンス小説のような紙束も見つけたが、そっと元の位置に戻しておいた。
手紙の中身に目を通す。そこには何てない日常の近況報告が書き綴られていて…私が公爵家に遊びに来ているという旨も書かれていた。
『セドリック殿下は大変愛らしいお方ですね。まるで姉弟のように仲良くなりましたのよ』
そんな事が書かれていて、本当に姉だったら良かったのに…なんて思った。その後はすぐに恋人レオンとの惚気が書き綴られていたので、なんとなく読みたくなかった私は手紙から視線を上げる。
すると丁度戻ってきたシャロン嬢とメイドに見られてしまう。
しまった。手紙に夢中だった…!
結局はシャロン嬢に許して貰えたが、メイドの疑うような視線が私に突き刺さる。
なんとなく、その黒い瞳は全てを見透かしているようで、魔女を思い起こす雰囲気のメイドだな…と思った。
最初のコメントを投稿しよう!