第21話(1) 同僚がデート中

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第21話(1) 同僚がデート中

「まさか…!」  僕は思わず叫んでしまう。  シモン様に頼まれて買い出した荷物を落としてしまいそうになるほどには、驚いた。  学芸都市のアカデミータウンで大通りを歩いていると、珍しいことに見慣れた姿があるなぁ。と、声でもかけようかと近付いてみたことが間違いだった。  だってまさか、カフェテリアで談笑を楽しんでいる様子のソフィの相手が男だなんて思いもしなかったんだから!  ほら、今まさに身を乗り出してまで何やら耳打ちをしている。二人で話しているにもかかわらず! なんて親密そうなんだ!  確かにね? スクールタウンと違ってアカデミータウンのカフェテリアの多くはお酒も扱っていて大人向けの店が多い。ソフィくらいの年齢の女性が楽しむには、アカデミータウンがピッタリだろうね。  だからってさ、なんでこんな僕やシモン様の目に触れるような場所を選ぶかなぁ…。  はぁ。知ってしまったからには、シモン様に報告しなくては…。 「…面倒そうなことになりそうだな」  長年仕えてきたから分かる。これは、かなり面倒なことになるぞ。声をかけるのを辞めて、見なかったことにしようか?  いや、こういった話は必ずシモン様の耳に入る…シャロンお嬢様あたりから。  あとで故意的に隠していたことがバレた時の方が、僕が大変な目にあうぞ…。  こうなったら、手ぶらで帰るなんて出来ない。とことん情報を入手して持ち帰らせて頂こう。  僕は意を決して、楽しそうに笑うソフィに近付いた。
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