第21話(1) 同僚がデート中

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「やあ、ソフィ」 「え……リチャード?」  こちらを振り返るソフィ。珍しくキチンと化粧を施し、洒落た服を着ている。絶対デート服だ。  僕の姿を認めたソフィは驚いたように目を丸くして、その後に少し気まずそうな顔をして笑った。相手の男もこちらを見ていたので、僕は目を合わせて軽く会釈する。男は人好きの良さそうな笑顔で会釈を返してきた。  うわ、男前だな…くすんだ金の髪に切れ長な赤い瞳。筋肉質そうな身体を白シャツの中に隠して、漂わせるのは悪い男のような少し危険なかおりのする美青年。もちろん、美しさでいうとシモン様には負けるけど…女に苦労しないだろう美貌の持ち主である。 「こちらは?」  僕は男の正体をストレートに聞くことにした。 「あ…こちらはゼ、じゃなかった……記者のマイケル・マクソンさんと言うの。マクソンさん、こちらは私の同僚のリチャード・ブラウンよ」  記者のマイケル・マクソン…確か、シャロンお嬢様がお気に入りの記者だよな、理解出来ないが。この男前があんなつまらない記事を書いているのか…。 「どうも、ブラウンさん」 「初めまして、マクソンさん。僕のことはリチャードと呼んでください」 「あ、では俺のこともマイケルと」 「はい、わかりました」  僕とマイケルさんが握手を交わしていると、ソフィが笑顔で少しの間でも同席しないかと誘ってきた。僕はお言葉に甘えて余っていたテラス席に腰を下ろした。
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