第21話(2) ご主人様が傷心中

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第21話(2) ご主人様が傷心中

「……ソフィに、恋人…?」  シモン様が待つナイトベル公爵邸までへの帰路はなんとも足が重いものだった。公爵邸へ到着しすぐさま執務室へと直行した。  僕のお美しいご主人様はなんだかとてもご機嫌な様子だったので、今ならソフィのことを伝えても大丈夫なのではないかと、思い切って報告させて頂いた。  すると、どうだい。執務室内は先程まで春の陽気のようだったのに、今では吹雪いているかのように冷え切っている。 「…………はい。どうやらお相手は、シャロンお嬢様お気に入りの記者マイケル・マクソンさんでして……シモン様?」 「……私は大馬鹿だ…」 「え、泣いてっ…!?」  ツーっと彫刻のような白い頬を滑り落ちていく、一粒の涙。  それはまるで女神の涙の如く神々しい泣き姿。お美しいです、シモン様…そのひと言に尽きる。が、彼の泣き言の内容に関しては俗物の何ものでもないのだけれど。 「何がゆっくりだ…何が自分のペースでだ! ソフィはとても素敵な女性だ…他の男が放っておくはずなんてないのに…私は、私はその事をすっかり懸念していた! こんな事になるのなら、あの日ソフィを押し倒してでも既成事実を作るべきだった!」
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