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既成事実って…そんな神聖そうなお美しい顔でめちゃくちゃ性的なことを考えているじゃないか。
「ちょ、ちょっとシモン様…そんな大泣きしないでくださいよ…ところで『あの日』って何ですか?」
僕はシモン様を気遣いながらも、『あの日』について思案する。全くピンとこないのだけれど…僕が知らないところで、シモン様は頑張っておられたのだな…。
相手があの鈍感野郎のソフィなだけに、シモン様の涙ぐましい努力になんだか泣けてくるよ。
「ああ、どうすればいい? 私はこれから何を目標に生きていけば? ソフィが他の男のものに? だめだ、考えただけで気が狂いそうだ! 仮にソフィがそのまま結婚したらどうする? 私はバージンロードを歩くソフィの後ろ姿を見送るしかないのか? けれど彼女はきっと振り返って私に幸せそうな笑顔を見せてくれるだろう…。幸せな家庭を築いて、子供を産んで…その温かな愛を一心に家族に注ぐんだ。その環境で育ったソフィの子はきっと天使のように可愛くて、私を見て『シモンおじさん』なんて言うんだよ…その度に私の胸は切り裂けそうになりながらも、私は笑顔でソフィの子どもの頭を優しく撫でてやることしか出来ないんだ…!」
…妄想が捗っていますね、シモン様。その時はリチャードおじさんがシモンおじさんの側にずっといますからね。
「そんなのあんまりじゃないか…くそ、私からソフィと未来の子どもを奪っていったんだ…絶対に彼女たちを幸せにしないと許さない! 涙の一滴だって流させてみろ、私があの記者の男を斬り捨ててやる! そうだ、そんなことにならないように今からでもその男を処理してしまおう!」
「し、シモン様…! 落ち着いて…」
かなり饒舌なシモン様の目は血走っていて、とても怖かった。怯えていた僕を見てシモン様はハッと我に返ってくれたらしい。
「……す、すまない。取り乱してしまった…」
「こんなお姿のシモン様、初めて見ました」
申し訳無さそうに顔を歪めるシモン様。彼は長い銀の睫毛で宇宙の瞳を隠すように俯いてしまう。
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