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「私もだよ…こんな激しい感情を抱いてしまうこと、自分でも初めて知った……ソフィ、ソフィ…」
そして女々しくも女の名を呼びながら泣く始末。
「……重症ですね」
恋って恐ろしいなって心底思った。
普段はあんなに綺麗で格好良くて次期当主としての威厳と気品を兼ね備えた僕のご自慢のご主人様なのに…今のシモン様は恋に敗れた一人の男で…はっきりと言うと、とても格好悪い。
まあ、それでも僕のご主人様への敬愛と尊敬と忠誠は変わらないし、時たま格好悪いシモン様でもどこまでもついて行く心積りなのだけれどね。でも、こんな姿を他の人には見せられないなぁ…。
そんな事を考えながら、涙を流すシモン様の背中を優しく撫でているとシモン様が唐突にソフィについて語り出した。
「…私にとってソフィは…一緒にいるととても落ち着く、温かな休日のような女性なんだ。たとえ私がどんなに陰気になってしまっても、いつも明るく楽しい気持ちにさせてくれる、春の妖精のように可愛らしい人…」
シモン様の語りを聞きながら、僕も幼い頃からよく知るソフィを思い浮かべる。
木に登って降りられなくなっていたり、ピカピカ泥団子の作り方を教えてくれたり、シモン様と三人で船遊びした時にソフィが悪ふざけしてシモン様を湖に落としてしまったり……うーん。
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