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第21話(3) 茜色の小公爵様
時刻は夕刻過ぎ。デートから帰宅されたお嬢様とレオン様より何やらプレゼントを頂いた。
中身はカラフルでとても可愛らしい瓶詰めのアイシングクッキー。日頃の感謝の印なのだと…ソフィ、大感激。
お二人は他にもエリック様やルーカス様、そしてシモン様や旦那様や奥様にもプレゼントを買ってきていたので、ご家族へ渡しに行こうと学芸都市から馬車を走らせてナイトベル公爵邸へと向かっている。
私は目の前で寄り掛かり合いながら眠るお嬢様とレオン様を見つめながらデートが楽しすぎて疲れたのかな、とクスリと笑った。
幸せだ。そう、幸せ。私が望む『お嬢様の幸せ』は、きっとこんな光景だろう。
私がこの世界に生まれ23年、7歳の時に孤児院に訪問に来ていた奥様と出会った事で前世の記憶を思い出した。
当時の奥様のお腹の中にはシャロンお嬢様がいらっしゃって、私はなんとも言えない気持ちになったことを覚えている。
だって、幸せそうにお腹を撫でる奥様を、そんな彼女を眩しそうに目を細めて見つめる旦那様を目の当たりにして、貴方たちに望まれて生まれる娘が将来悪女になるだなんて…そんな不幸はあるのかと胸が締め付けられた。
そして、未来の結末を知っているのに何もしない自分に対して、すごく罪悪感を感じた。
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