第21話(3) 茜色の小公爵様

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「…シモン様、シモン様…起きてください」 「ん………ソフィ?」  彼の肩を軽く揺らすと、眠気まなこなシモン様がぼうっと私を見上げてきた。 「奥部屋でお休みになってはいかがですか? あ、喉渇いてますか? お水をお持ちしましょうか?」 「……寝る」 「わかりました。リチャード…は、起きる気配がないので放っておきましょう。シモン様、立てますか?」  私がそう声をかけると彼は頷いてフラつきながらも椅子から腰を上げて奥部屋の方へと歩き出した。 「なぜそう泥酔するまでお酒を飲まれたのですか?」  危うい様子のシモン様から目が離せなくて歩みを進める彼の側に随行した。  やはり奥部屋へ入ったところでバランスを大きく崩したため、私はすぐにシモン様の脇に頭を突っ込み何とか倒れてしまいそうな状況を食い止めた。  お、重い…足をプルプルさせて必死にシモン様を支えていると、何を思ったのかシモン様が腰を少し曲げて私に抱き付くように覆い被さってきたのだ。
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