第21話(3) 茜色の小公爵様

8/9
前へ
/320ページ
次へ
 訳がわからないと首を傾げていると、シモン様は甘く微笑んで私の首筋に顔を埋めた。 「ひゃ!? し、しもんさまーっ!?」  硬直していた身体が更にぴしりと固まった。  シモン様はあろうことか、私の首筋を舐めたのだ。シモン様の熱い舌が私の肌を這うたびにゾクリとした。  私は逃げるように後ずさるとシモン様はグイッと私の腰を引き寄せて、「逃がさない」なんて仰る。 「ん、ふあっ…や、やめ、シモン様っ…!」  くすぐったいとゾワゾワ。私の身体を駆け巡る神経の伝達信号。この感覚を…私はなんとなく認めたくなかった。 「ふふ…しょっぱい」  顔を離して色気たっぷりに微笑むシモン様を、私は呆然と見上げていた。  一体何が起きてるの? 私の腹部あたりに…彼の腰を押し付けられたことで確かに感じるこの硬い感触はなに?  前世の記憶を巡らせても、思い当たるものはひとつしかない…。怖くて、下を見て確かめられない。そんなまさか。シモン様が? あのシモン様が…? 「ソフィ、恋人ができたんだってね…その男が好きなの?」  微笑むシモン様はさっそくリチャードに聞いたらしく私に尋ねてきた。 「え、あ、は、はい…」  腹部の感触に全集中の私はそれどころでなく空返事を返してしまう。それがシモン様の何にスイッチを入れてしまったのか…。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加